10/14/2013

鑑賞記録: 5月

「世界で一番オシャレな刑務所」(2012年、監督 Chun Kit Mak)
六本木シネマートで開催されていたAQFF2013にて

フィリピンの巨大刑務所で、ファッションデザイナーが受刑者に被服を教える内容のドキュメンタリーフィルム。カジュアル、アバンギャルド、フォーマルの作品を少人数グループでデザイン、制作し、最後は外部の人たちを招いてファッションショーをする。教えるファッションデザイナーをはじめ受刑者たちのバックグラウンド、刑務所内の様子を見せていく。プロジェクトを通じて人生に希望を見いだしていく人びとの姿が描かれている。 これは広く上映して欲しい作品で、超お勧め! この映画祭はボランティアスタッフがどこからも資金的援助を受けずにやっているもの。彼女たちの作品選択眼は一流とみた。



日本写真の1968」「写真のエステ 五つのエレメント」
東京都写真美術館にて

「1968」を学芸員解説付きで鑑賞しようと予定し少し早めに到着。図らずもどちらも学芸員解説を拝聴することが出来、学びの多い時間だった。それと、東松さん、森山さん、北井さんという大好きな写真家のオリジナルを間近で観れたことに感動。

「1968」のメモ
東松照明に始まり、東松照明で終わる展示。ここ1年ほど日本の写真家の作品を集中的に観ているのだが、東松さんの「すごさ」には身体が震えるのだ。1968年の作品群とあの時代を俯瞰する視点を与えられ深い理解を得られた。 森山大道の缶詰の写真は印画紙にプリントしたものと、雑誌の紙に印刷したもの2点展示。その展示の意味を伺わなければ見過ごす所だった。同一ネガの異なる印刷表現、観る者の受ける印象の違いというものを実感するとともに、「表現としての印刷」ということを考える。 「日常」をどう表現するかということを写真鑑賞しながらよく考えるのだが、石黒健治の「HIRISHIMA NOW」で我が意を得る。

「写真のエステ 五つのエレメント」メモ
タイトルのエステ初見時は現在普及している和製語エステティックを思い浮かべたが、感性学を意味する「エステティカ」を近代に入り翻訳した「美学」の意であった。「光」「反映」「表層」「喪失感」「参照」というエレメントを柱に「写真の美しさはどこにある?」ということを見せていく。
 今回、都写美他ベーコン展を見たが、企画者の視点/意図を展示でいかに伝えるかということに改めて感じ入った。その意味においてこの展示は素晴らしい。 クリスチャン・ボルタンスキーのGymnasium Chasesはウェブでしか見たことがなかったのだが、そもそも24枚組の銅版画集として表現されたポートフォリオをどのような考えで壁に「配置」したのか。企画者である学芸員の答えは明快だった。一点ずつ鑑賞したときとは異なる、壁全体から受ける印象は、ボルタンスキーの古着の集積のインスタレーションと同様に、取り戻すことの出来ない失われた時というものを強烈に訴えかけてくる。 
それにしても都写美の収蔵品はすごい。ヨゼフ・スデックの「アトリエの窓辺より」と田原桂一のシリーズ「窓」が並ぶのだ。



フランシス・ベーコン展
東京国立近代美術館にて

フランシス・ベーコンと訊き、哲学者がなぜと思ったほどに知らなかったので、何かを語ることはできない。既にご覧になられたお友達の言葉が頭の片隅にあったが、私が感じたのはカオスより静けさであった。
土方巽、ウィリアム・フォーサイスという身体表現者への影響を知る。帰宅後、フランシス・ベーコンを特集した芸術新潮2013年4月号を購入した。