3/26/2013

数学的な美しさ

キモリさんが、2枚の画像とともにツイートされていた。
上の画像はアメリカの画家、ジャクソン・ポロックの「Mural on indian red ground」で1950年の作品。
もう一枚はキモリさんがフィールドとしている森林の「春の雪面」。
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思わず膝を打った。これだ!ポロックだ。この2枚はとてもよく似ていると思う。
実は私も春先の雪の上の落下物に心奪われていた一人だ。雪が融けてくると姿を現わす初冬に落ちた枯葉や実。それらと春の風で新たに落ちたもの等が織りなす景色は、やけに美しいと感じていた。持っているスキーのストックで、額に見立てて四角く線をひいてみる。面白いことにどこを切り取っても絵になるのだ。言葉を変えれば、そこにあるものに過不足がなく、安定感や一種の心地よさを感じる。フラクタルの構造がそこにあるのかどうかは不明ではあるが、視線を上に変えて、青空に枝を広げている落葉樹の複雑な線を見るときの心地よさと非常に似ている。

ジャクソン・ポロック(Jackson Pollock:1912~1956年) の絵とフラクタルという幾何学の概念の関連については、ちょうど1年ほど前にNHKBSの美術番組で知り目からウロコが落ちた。無造作に描かれているように思える抽象画を解析していくと、図形の部分と全体が自己相似形になるフラクタル構造になっていたというのだ。

(ポロックの絵の中にフラクタルを見いだしたR.P.テイラーの研究については下記日経サイエンスの記事に詳しい。
また、やまでらくみこさんのブログでは、ポロックの表現技法であるドリッピングとフラクタルについてわかりやすく説明されている。)




上記の番組ではポロックのアトリエの窓から林が見えたという。おそらくそこから受けたインスピレーションを縦横無尽な絵の具の散らばりで表現したポロック。フラクタル幾何の理論は数学者ブノワ・マンデルブロ(Benoit Mandelbrot: 1924〜2010)によって1975年に考案されたものだ。従って、ポロックがその理論を知っているはずはない。「私は、絵の具の流れをコントロールできる。そこに偶然はない。」との言葉を残しているそうだが、やまでらくみこさんがこちらの記事で解説されているように、「個人という枠を超えたところに存在する、何か普遍的な法則のようなものを捉えようとしていた」意識的な活動の結果が、ポロック全盛期の作品となったのではないか。

自然界にあるものの造形には数学的な美しさを見いだすことが多い。この番組以降、私が森の中で撮る写真は明らかに変わった。フラクタルやフィボナッチ数のことを頭において自然散策をするのも一興だ。


ジャクソン・ポロックが表現している様子。リンク先ブログの上から2枚。
Photographs of Extraordinary Miniature Models Depicting Famous Artists' Studios
photo by Joe Fig