12/12/2012

エゴマのこと

杉野沢の翠山さんで初めていただいた「いぐさ*煮**」という一品、ジャガイモや大根、こんにゃく、チクワなどが入った味噌味の煮物に、炒ってから形をとどめる程度に擦ったエゴマが入っている。あれ以来、産直の店にいく度にエゴマを探していたがずっと見つからずにいた。
そして先日、とうとう見つかった。場所は「道の駅しなの」。複数の生産者の方が作っておられる様子で、ざっと見渡したところで5名の異なるお名前があった。(後で訊いたところ、現在生産者は10軒ほどとのこと)

* 「いぐさ」または「いくさ」とはエゴマをさす言葉。杉野沢地区、信濃町で使われている。
** 「いぐさ煮」の作り方:ジャガイモ、大根、人参、こんにゃく、ちくわ等を煮て、出汁と味噌をいれる。エゴマを炒り、擦ってから煮物の中に入れて一緒に再び煮る。擦りすぎると油が出るので,その前にやめる。一晩置くと味がしみて一層おいしい。(杉野沢翠山さん談)




杉野沢(妙高市、旧妙高高原町)の郷土料理ということで、市内他の地域では訊いた事がない。なぜ、4,000人規模の旧妙高高原町の中で杉野沢だけの郷土料理なのか、不思議に思っていた。
お隣長野県信濃町で複数の生産者の方が品物を出されているということは、信濃町ではよくエゴマを料理に使うという事ではないだろうか。杉野沢と長野県信濃町は川一本で隣接している。婚姻関係もあり、互いに影響しあっているのではないか。

長野県飯山市の書店で買い求めた地方出版社が出した郷土料理の本2冊を早速あたってみた。残念ながらエゴマの項目さえなかった。限定された地域での料理ではないかと推測してみる。

エゴマを求めた道の駅しなのの店員さんが信濃町ご出身、在住ということで、エゴマをどのように使うのか尋ねてみた。擦って味噌、砂糖とあえ、田楽に使ったり、餅に絡めて食べるという。しかしそれ以外の使い方についてはご存知ないとの事であった。

エゴマの事を他のところで書いたら教えてくださる方がいらっしゃった。岩手県一関で、エゴマを擦り甘辛にして餅に絡めたものを召し上がった事があるとの情報。さらに福島県会津地域では「エゴマ味噌」が売られていて、田楽やご飯に載せて召し上がるという***。
Wikipediaを見ると、福島県では比較的多く栽培されていて、「しんごろう」や「かりんとう饅頭」など多くの菓子や料理があるという。岐阜県飛騨地方でもエゴマ味噌を五平餅や焼いた餅、茹でた青菜にあえるなどして生活に密着して食用されているとのことである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%B4%E3%83%9E#.E7.A8.AE.E5.AD.90

*** 会津で「しんごろう」を食べさせてくれる満田屋さんのサイト


さて、エゴマが販売されていた長野県信濃町に戻る。店の人の情報では味噌と和える使い方であったが、新たな情報を寄せてくださる信濃町の方がいらっしゃった。
雑煮に入れるというのである。作り方はこうだ。エゴマを炒ってすり鉢で当たり、そこに雑煮の汁を少し入れてとろとろのものを作る。それを雑煮の上からかけて食べる。
そして興味深い事に、この食べ方は長野県でも北信の一部、信濃町柏原を中心に行われているというのだ。最初に出会った「いぐさ煮」でのエゴマの使い方とは異なるが、信濃町と杉野沢の関係は濃厚であるように感ずる。味噌にあえるのではなく、汁物に使うという点では共通している。柏原といえば俳人小林一茶の生誕の地である。数多く残された句の中に、「いくさ(信濃町では濁らず)」を謳ったものがあるだろうか。

【調査は続く】

おまけ
道の駅しなのには地元生産者の出品物としてエゴマの他豆類が豊富にあった。丹波の黒豆、生の落花生、モロッコ豆、小豆、銀杏、エゴマを購入した。
店内で食べられるソフトクリームが濃厚で美味しかった。
駐車場からみる黒姫山は絶景である。