3/24/2012

リベンジ!

(戸隠鏡池でスキーハイキングのプロモーションビデオの撮影。Myoko Snow Sportsさんのご協力をいただいた)


午前中、ゲレンデでスキー学校のレッスンを受講されたが、なかなかうまくいかず、リベンジしたいという思いで午後からうちへいらっしゃった50代のお客様。受講されたスキー学校は教え方が上手だと評判のところだ。半日という短い時間だったためなのか、落胆するだけで終わられたとのこと。靴が痛かったとおっしゃっていた。


テレマークのプラスチックブーツと、ステップカットのテレマークスキーでゴルフ場へ行く。ビンディングはスリーピン。履くのを手伝い、平坦なところを歩き始める。

こちらから何も言うことがないくらいに、スムースに板を滑らせながら、かなり速く歩かれる。しっかりと重心に乗っておられるので、ふらつかない。緩やかな上り坂もステップカットを効かせて、後退する事無く登っていく。午前中ご苦労されたとはとても思えない。靴への不満もない。

クロスカントリースキーは経験があるのかと思い訊いてみると、スキーは生まれて初めてという。他のスポーツも特段やっておられるわけではないと訊き、驚いた。
スキーが初めての人にありがちなのは、一歩一歩スキーを持ち上げて「歩く」動作をしてしまい、バランスを崩すことなのだ。スキーを前に滑らせるということを教えないといけない。緩やかな上りでは、一歩が大き過ぎてバランスを崩し、後退してしまうのも常。そのことを言うと、滑らせた方が身体が楽だとおっしゃる。まさにその通り。


じんわり汗ばんだところで小休止。スコップで雪のテーブルとベンチをこしらえる。なにもなかった場所に突如カフェが出現。ただ歩くだけと思っていたらしく、たいそう喜んでくださる。県道からもゲレンデからも近いその場所が、ちょっとしたことで異空間になる。

先ほどまで聞こえていたゲレンデのアナウンスも、除雪作業車の音も届かない。風の音だけだ。そして、我々以外誰もいない。小雪が散らつき、山はガスがかかって見えないが、幻想的な風景だ。

お茶を飲みながら旅の話をする。西アフリカを旅したときに、海岸で同じように砂のテーブルとベンチをこしらえ、お茶を飲んだそうだ。その上にかけたというテーブルクロスはどんな模様だったのだろう。互いの旅でのトラブルを披露しあう。トラブルがあった旅ほど忘れられずにいるもの。旅の記録を書く際には、そのトラブルが物語に色を添えてくれる。今回の日本への旅で初めてスキーを経験し、少々悔しい思いをしたのもきっと忘れられない思い出となるはずだ。
次の旅先は中東とのことで、少々羨ましい。そういうと、一緒に行きましょうなどとふざけておっしゃる。だんだんと霧がはれ、向かい側の山が見えてくる。


登ってきたので帰りは滑らなくてはならない。踏み跡のない緩やかな斜面を選んでいく。やや急な斜面になると後ろに重心がかかり、真下を向いてしまう。そして転ぶ。ちょっと落胆の表情をされる。平坦なところを歩く。ゆっくり滑る。その繰り返しで到着する。


ゴルフ場の起伏は、斜面を選んでいくと初めての人にはちょうどよい練習場となる。圧雪していないので、転んでも痛くはない。何より混んでない。ぶつかる心配はない。


さて、リベンジできたのだろうか。
ハイキングが終わり、道路に出たところで大きなハグをされた。事務所で待っていたコーディネーターに「3回しか転ばなかったよ」と嬉しそうに話されていた。来シーズンは一日かけてハイキングしたいそうだ。私はそれまでに英会話をマジで頑張らないと。