ここの最大の特徴は、宿のおやじさんが自ら採集してくる山菜がたっぷり味わえることと、おやじさんの手打ち蕎麦。山菜といえば翠山さん、というくらいに山菜に詳しいおやじさんなのだ。私も数年前からお噂は耳にしていた。
今回はお客様のご到着からご出立までずっと付き添う形だったので、すべてのお食事内容を把握。夕食は同席させてもらった(もちろん自腹で)。写真を撮ろう撮ろうと思いつつ、箸を動かすのとおしゃべりに忙しく撮影は断念。後日料理の内容を訊ねたところイラストをファックスしてくださった。
山の宿らしく山のご馳走だった。食材確保のために山を毎日遅くまで歩き回ってくださり、言葉通りの「ご馳走」だ。
ゆきざさのおひたしうとなの漬け物コゴミにんにく炒めわらびささめ和え行者にんにく醤油漬け焼きタケノコ(根曲がり竹)うとなの天麩羅ゆきざさ天麩羅行者にんにくとジンギスカンの陶板焼きニジマスの塩焼きうど煮物タケノコご飯(根曲がり竹)タケノコ汁(根曲がり竹)杏仁豆腐
素朴で大胆な天然の素材の料理は大変おいしい。「タケノコ汁は三杯すするのが、こちらの習慣。たくさん召し上がってください」というおやじさんの言葉通り、量もたっぷりあり、皆さん何杯もおかわりされていた。
流通のよい都会で全国の美味しいものを召し上がっているお客さんは、はたして満足してくださるだろうかという心配があったが、それは杞憂に終わる。鮮度が違うので歯ごたえと味が格段によいそうだ。
翌日の昼食は有機玄蕎麦を石臼で挽き、おやじさんが打った蕎麦と、笹箕寿司、山菜天麩羅。
茹であげた蕎麦を水洗いした後、氷でしめていた。蕎麦にうるさいお客さんが「もう一枚」とご所望。おやじさんが心を込めて打った蕎麦は、あっという間になくなっていた。
最後に、私が最も気に入ったことを。おやじさんと宿を切り盛りしている娘さん。この方がとても気持ちのよい接客態度なのだ。おそらく今まで経験した宿泊およびひと様にご紹介した宿の中で一番ではないだろうか。飾らない気さくな人柄がそのまま出ている。「はい」という返事が気持ちいい。妙高の山の子ども達は素直で温かいのだが、その良さをずっと持ち続けている人なのだ。
初めてご紹介した宿だったが、とてもよいところだった。
秋は天然のきのこが堪能できる。9月中旬がよいそうだ。