5/02/2014

山笑う

   故郷やどちらを見ても山笑う   子規




芽吹きが始まると止まっているようにさびしげだった景色が一変します。毎日新しい色が加わり、一雨来た後などさらにその鮮やかさは増し、ふっくらとした生命力あふれる姿に思わず足を止めてしまいます。
そして冒頭に一例を示した「山笑う」という季語を見るたび、これほど的確に春の山を言い表す言葉は見つからないと感心するのです。北宋の山水画家、郭熙(かくき)の絵画論にある言葉が、この季語の原点とのことですが、その的確さは春だけにとどまりません。


春山淡冶(たんや)にして 笑うが如し
夏山蒼翠(そうすい)にして 滴るが如し
秋山明浄(めいじょう)にして 粧うが如し
冬山惨淡(さんたん)として 睡るが如し


以前雪融けと共に芽吹き始めた里山を撮影していた友人が、その一枚に「山笑う」とタイトルをつけました。それが季語であることも、郭熙の言葉からの出典であることも知らなかったそうです。柔らかな色調の山を目にして友人が感じた喜びもあったそうですが、なにより山が嬉しそうに感じたとのことでした。

山笑う季節。私は山の恵みである山菜をいただき、五感で春の喜びを満喫しています。



【参考】

台北の国立故宮博物院に所蔵されている郭熙の「早春」。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Guo_Xi_-_Early_Spring_(large).jpg



季語の背景(6・山笑う)-超弩級季語探究 >現代俳句協会ブログ


資料317 山笑ふ・山粧ふ・山眠る(『改正月令博物筌』・『臥遊録』より) >小さな資料室