5/26/2012

東北の若者たち

冒頭でお見舞いの言葉をいいたいと思っていた。参加者は岩手県、宮城県、福島県の方たちだ。スタッフの方もお一人を除いて皆さん東北ご出身である。むしろ礼儀として当然いうべき言葉であろう。そう思っていたのだが、一瞬考えがぐらつく。
この研修は子どものキャンプなどでのボランティア養成だ。「楽しく学ぼう」と、スタッフの方も挨拶されていた。地震や津波の事をしばし忘れて、楽しい時間を過ごしたいと思っているのではないか。お見舞いの挨拶とはいえ、話題に出していいものかどうか。自己満足の言葉ならむしろいらない。


講演前の昼食時に、ある方が沿岸部のご親戚を訪ねられた時の話をされた。すると、近くに座っていた参加者の若者がご自分の体験を語り始めた。一度高台に逃げたものの、家族を心配して海近くの自宅に戻った事。そこで目撃した津波の恐ろしさ。
携帯に残している2枚の写真を見せてくれた。更地のように変わり果ててしまったご自宅周辺。両脇が潰れた車。「わたしと母が乗って逃げたときの車です。高台に上がって車を見ると、津波で浮き上がり180度回転してコンクリートの建物の間に挟まって動かなくなっていました。」。日付を見ると12日に撮影されたものだった。

伝えようと思った。東北の皆さんが大変な経験をされたことを忘れないでいる事、応援したいと思っている事を。



与えられた90分の時間はあっという間だった。子どもの自然体験やキャンプなどのボランティア養成の研修会だったので、これまで出会った学生さんたちの様子を中心にお話しした。特に5泊6日の妙高フレンドスクールでの学生さんたちの変容については、彼ら彼女らの言葉を紹介し具体的にイメージしていただけるように心がけた。けして上手とはいえない話し方だったと思うが、よく聴いてくださり、内容を深める質問をいただくことができた。

講演後、控え室に質問しにきてくださった学生さんがおられた。復興支援を仲間と続けられているという。私が知っている復興ボランティアの人たちと彼らを繋げられそうだ。ひょっとすると一緒に何かを始められるかもしれないという思いにもなった。やはり冒頭で気持ちをお伝えしていてよかったと思った。

この日は最初から最後まで皆さんと一緒に過ごした。ここに参加された若者たちは立派だと思う。どれだけ心の中に辛い、悲しい思いを抱えているか。私の想像など及びもつかないことだろう。ボランティア活動は自分自身の為にもなるとはいうものの、その一歩を踏み出し、仲間を作り、時には一人で、ガシガシと前へ歩き出している。楽しそうに活動している若者たちを見ていて、何度私の涙腺が緩みそうになった事か。岩手に呼んでいただき、この若者たちと出会う機会をいただき本当に感謝している。

岩手山
講演中
野外炊事
岩手山青少年交流の家のスタッフと参加者の皆さん